自転車の部屋
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「自転車は世界を動かす」
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Cycling is good for
you!
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| 2008/12/5 とあるクラブでのスピーチ |
要旨
自転車は、交通手段、スポーツ・レジャー用として活用されてきたが、環境に優しい点から、近年、近距離交通機関として、都市構造や生活スタイルを変える原動力になっている。
目次
イントロ(自己紹介を兼ねて)
1.
自転車の魅力、自転車に乗るメリット
2.
日本の自転車の現況
3.コミュニティ・サイクル・システム「ベリブ」の紹介
4.
構造改革・意識改革・生活改革のシンボルとしての自転車
――自転車は世界を動かすーー
5.
結びの言葉
イントロ:ご紹介いただきました阿部でございます。会長からご鄭重なご紹介をいただき、恐縮しております。このような伝統と格式を誇るクラブで、こうして講演をする機会を与えていただき、誠にありがたく、誠に光栄でございます。
最初に、自己紹介を兼ねて、ここに参上することになったいきさつをお話しいたします。
ただいまのご紹介は、私のいわば表向き公的な面の紹介でございまして、今日は自転車普及の財団法人の会長としてではなく、阿部毅一郎個人としてやって参りましたので、少々私の私的な面を紹介させていただきたいと存じます。
私は1997年、今から10年以上前に、インターネット上に「阿部毅一郎のお愉しみコーナー」というホームページを開設いたしまして、私の愉しみ・趣味の数々を紹介しております。スポーツのコーナーはじめ、30を超えるコーナーを設けておりますので、読み通すには、おそらく、数ヶ月かかる分量に達しているものと思います。「史上初の個人アーカイブズ」を構築することを目標におよそデジタル化できるものは、文章であれ、水彩画であれ写真であれ、なんでもアップしておりますので、結構膨大なものになっております。
もともと書くことが好きでしたので、ワープロもプリンターとセットで120万円する時代(1982年に)に購入して、論文・評論をペンネームで発表したりしておりました。著作も4冊ございます。
実は、私、高校生の時に、「自分は、40年後、50年後の自分にとっては、いわば父親のようなものだ。子孫には、美田を残すより、人生を多様に楽しめる趣味を残そうと決意いたしまして、そういう人生観のもと、長年生きてきましたので、ホームページに紹介できるような多くの趣味を今も愉しめるのでありまして、ホームページの冒頭に書いておりますように、「人生は愉しみから愉しみへの旅である」と常々思っておりまして、この講演も大変愉しみにして参上した次第でございます。
ここに参上するきっかけになりましたのも、私が、現在自転車の宣伝・普及をすることをいわば私の愉しみの一つに付け加えていることと関連しているわけでございます。
4年半前、たまたま自転車関係の財団法人で仕事をすることになりました。自転車は、子供の時代からいわゆる「三角乗り」で、オヤジの重たい自転車で乗り始め、高校時代は、自転車通学し、マウンテンバイクが、ブームになった時には、それを購入したぐらいですから、一応の自転車好きで、一応自転車のことは知っているつもりでした。
しかし、仕事として、自転車を振興し、その普及を図るポストに就くということで、自転車について、勉強し直し、工場や研究所にも足を運び、色々と考察してみましたところ、自転車の素晴らしさ、無限の可能性を持ったツールであることが、よくわかって来まして、こんな優れものを放っておくわけにはいかない。日本では、必ずしも、自転車の素晴らしさ、真の実力が正当に評価されていない。ならば、自分の全能力を傾けて普及宣伝に乗り出し、実力相応に評価していただき、もっと乗りやすい環境を作ることに力を入れよう。そのためには、自転車に関心を持つ人を一人でも多く増やして、ご協力をお願いしようと言う気になったのであります。
私がホームページを開設して間もない頃、作家の林望さんが私のホームページを見て、「俳句、囲碁、エッセイ、スポーツ、水彩画まで、何でもござれの風流な紳士が、趣味で作っているホームページだ。「日本にも本当の意味での趣味人がいたんだなとうれしくなりましたね」とある雑誌(日経ネットナビ1997年10月号)に書いていただいたことがあり、これまでの生き方を、イギリスをよく知る人から肯定されたような気がして大変うれしかったのですが、私のその趣味人的フィリングに、これまでの生き方に、ぴったり来るものが自転車にあるということで、自分の趣味も総動員して、自転車のPRに乗り出そう、自転車の伝道者になろうと決意し、水彩画に描く、エッセイに書く、インタビューを申し込まれたら、その日のうちでも一切断らない、挨拶、スピーチを求められたら、すぐ、受けることにしたわけです。
同窓会や、クラス会、私的な集まりでも、旅行先でも、機会があったら、自転車の話題を持ち出す。自転車関係の催し物PR用のチラシ、パンフレット類のみならず、自ら描いた水彩画のコピーを配りまくる。今日もお持ちしましたので、これからお配りします。官公庁の情報誌である月刊誌「時評」には、これまで6枚の水彩画を表紙絵として採用してもらっていまして、いつもは、編集者に好きな絵を選んでもらっていたのですが、この自転車の絵(2006年4月号)のときだけは、載せるならこれにしてほしいと注文をつけました。稿料代わりに、絵はがき100枚いただけるのですが、それを焼き増しして、皆様にお配りしている次第です。
このクラブのガバナーとは、あるクラブの委員会で3年ほど、ご一緒しておりまして、その委員会でも、私がよく自転車の話をするものですから、お目に止まり、あいつにひとつ自転車の話をさせてみようということになり、今回のお招きになったのだと思います。会長からスピーチを頼むとのお話があったとき、私が快くお受けしたのも、以上申し述べたような背景があってのことでした。
そういう意味で、今日は、21世紀の乗り物である自転車の魅力を、皆様に少しでもご理解いただき、自転車への関心を少しでも、増やしていただきたいと思ってやってきた次第であります。
時間があまりありませんので、最初に、自転車の魅力、自転車に乗るメリットを、かいつまんでお話しし、次に、日本の自転車利用の現状に少し触れ、本日のメインテーマである、公共交通機関としての大規模サイクルレンタルシステムについて、パリ市のベリブを中心にご紹介したいと思っております。
1.自転車の魅力(広大なバイシクルの世界)自転車に乗るメリット
一番身近な乗り物である自転車は人間、人生のシンボルであると思っております。
人類が四本足から二本足へとなったのは、たかだか700万年前であるのと同じように、四輪から二輪へとなったのもわずか200年前であり、生物の最終進化形態として人類があるように、乗り物としての最終進化形態として、自転車があるわけであります。
自転車に乗れたときの喜びを、皆様は覚えておられますか。私どもの財団法人では、小学生の作文コンクールを催しているのですが、自転車に乗れたときの喜びを綴った作文が結構多く寄せられます。言葉を持たなかった幼児の時の、ハイハイから二足歩行したときの喜びを、言葉を獲得した後での、自転車に乗れたときの喜びとして追体験し、文章にしているように思われます。しかも、自転車に名前をつけ、友達感覚でつきあっている。自転車を人間に近い、親しみを持つ存在、良き伴侶、仲間、遊び友達、人生をともに楽しむツールとしてとらえている。
自転車は、人間の身体、頭脳に直結した、その延長線上にある、人間の身体、精神にもっともフィットしたツールということができます。
自転車操業というと、悪い意味でとられるが、われわれ自体が、毎日飯を食い、空気を吸い続けなければならないという意味では、自転車操業そのものです。そういう意味で、人生そのもののシンボルであり、人間くささが自転車の身上でもあります。
私の選んだ自転車の5Sは、シンプル、スモール、スマート、ストロング、スピーディであります。あれほど単純な構造で、小さく、わずか7キログラムもしない自転車で、100キログラムもある大の男を乗せて、時速100キロメートルで走る。ツール・ド・フランスに出るクラスの選手は、急な坂の下りでもペダルを踏むので、時速100キロメートルに達すると聞きます。
自転車は幼児から高齢者まで年齢性別を問わず、季節を問わず、昼夜を問わず、低速でも、高速でも、乗ることができます。人生のあらゆるステージ、仕事、旅、スポーツ、レジャーなどの局面で、活用可能です。また、平原、山、丘、上り坂、下り坂、川辺、海岸、都会、田舎…場所を選ばす、どこでも乗れます。
乗れば風を感じ、自分が、生き物であることを実感します。
自転車は、なかなかの高級品です。
自転車のグラム当たりの単価は、きわめて高い。自動車に比べればよくわかります。2Tの車で350万円なら1750円・/KG, 8KGの自転車で20万円とすれば、25000円/KG。50万円、100万円の自転車もざらにあります。
自動車は板金加工、自転車は冷間鍛造。部品のひとつひとつが、贅肉を削り取られ、厳選され磨き上げられています。人の命を乗せて走るのですから、品質管理も大変厳しい製品です。
省エネルギーの最たるものと言うことができます。「砂糖100Gに相当する500キロカロリーで自転車は37キロ進むが、自動車は700Mしか走らない」これは、自転車による都市作りを進めているイタリア、フェッラーラ市のキャッチコピーです。同市は、ユネスコ世界遺産に1995年に登録された、人口13万人の都市で、ミラノより156キロにあり、61キロに及ぶ自転車専用道路を持っております。・
エネルギー効率は自転車が一番良い。
たとえば、人は1キロ歩くのに、体重1Gあたり0.75カロリー必要だが、自転車に乗っていると人は0.15カロリーで移動できる。すなわち、歩くの5分の1ですみます。ちなみに自動車は0.85カロリーだし、鳩は0.9カロリー、ネズミは16カロリーです。
環境に優しい
排気ガスを一切出さない。地球温暖化が深刻化するなかで、注目を浴びているのはこの点です。自動車に比べて、格段に社会的費用が安い(道路、駐車場、事故、公害、健康)。
健康にいい
ドイツには、「トラック一杯の薬より、自転車一台」ということわざがあります。
エアロビクス(有酸素運動)として大変優れていて、循環器系の強化(心臓、脳)に役立ち、日本人の三大死因である、心疾患、脳血管疾患、などを3分の1にするとの説もあります。糖尿病にもいいと言われています。日本人は糖尿病にかかりやすく、40歳以上の男性の4分の1が糖尿病患者か予備軍と言われております)。また、日本人は、長生きだが、寝たきりの比率が高いと言われておりますが、寝たきり老人にならないためには、腸腰筋を鍛える必要があるのですが、それには最適です。また、膝に負担がかからないので、膝が悪い人にも安心して乗れます。歩くと自分の体重の7倍の重みがかかる。欧米で、自転車を多くの都市が、奨励しているのも、医療費の削減に貢献するからでもあります。
(2009.5.1補足:イギリスの自転車協会が、自転車の健康効果レポートを公表しており、そのなかに1995年以降、約5,6年間の疫学的な調査によって、特に大腸がんと乳がんに効果があるとの報告がある。乳がんの場合、自転車に乗る婦人の場合、約39%発症率が低くなるとされている。大腸がんの場合は40~50%軽減できるとの報告もある。(溝端光雄氏による。「利用者ニーズに基づく自転車の開発に向けた調査検討報告2009年3月財団法人日本自転車普及協会p.88)
自転車の多様性
人間の想像力、創造力の及ぶ限り、次々と新しい自転車が生み出されてくることでしょう。新しいライフスタイルが創出されれば、それに合った自転車へのニーズが生じます。
用途的にも、新しい用途が毎年開発されると言ってもいいほどです。MTBの開発は1970年代でしたし、北京オリンピックではBMXが、自転車競技に新種目として登場しました。今後は障害者向け、高齢者向けなどのニーズに応える自転車が開発されてくることでしょう。自転車は、自由にアッセンブルができるので自分仕様の自転車がいくらでもできます。
形態、材質
発展途上の乗り物
用途も、材質も(軽量化:カーボンファイバーで6キロ台のものがあります。
(注:2009/11/05記す6kgを下回るものもある。材質として、木(マホガニー)も登場(佐野末四郎氏の製作)
技術も、毎年進歩しております。
水着では、イギリスのスピード社の水着が北京オリンピックでずいぶん話題になりました。8冠王フェルペスをはじめ、多くの選手が着用し、メダルを量産しました。日本の北島康介も着用し、平泳ぎ二冠に輝き大いに話題になりました。
実は同じようことを、自転車のトラック・レースでは、日本のスギノ・テクノ社のチェーンリングが果たしていたのです。そのチェーンリングを名指しで購入したイギリスチームが金メダル10個中7個を獲得しました。実にメダル30個中16個を、スギノ・テクノのチェーンリングが獲得しているのです。ヤスリでも傷のつかない超超ジュラルミンに、表面コーティングは、通常のアルミの表面処理のアルマイトの3分の1の摩擦係数を達成しており、まさに研究所レベルの製品なのです。(参照:その後もワールド・カップなどで着実に成果を上げております→SuginoTechnoRecords)
ギアにしても、1970年代の6段が、現在11段になっており、内装8段のものもあります。ギアの歯の形のひとつひとつが異なり、チェーンがスムーズにギア板の間を滑るようになっています。
フレームは、金属からカーボンファイバーが主流になっております。
発電機の内装化。
コンピューターの活用も進んでいます。
動力伝達方式には、二輪駆動車も。
(注:2009年11月5日記す:木(マホガニー)制の自転車も登場(佐野末四郎氏の製作)したが、これが最高最速の自転車と思われる。)
スポーツとして人気が高い
欧州では、サッカーと1位、2位を争う人気スポーツです。(日本43位?)
ロード・レース(グランツール:ツール・ド・フランス(1903年~、3週間、3657キロ、1日190キロ、平均時速40キロ。国民的人気、レースの優勝者は、首相より知名度が高く、シャンゼリゼに凱旋する時刻には、かなりのインテリ女性でも、ブリッジを放り出しても見たがると言います(「幸福先進国フランス」秋川陽二 講談社1981
p.76)。ジ・ロ・デ・イタリア、プエルタ・ア・エスパーニャと並んでグランツールと言われております。)
わたしどもの財団法人では、ツアー・オブ・ジャパンを主催しております。5月の自転車月間に堺市をスタートし、奈良市、美濃市、飯田市、富士山、伊豆市を経て、東京都でゴールインする、8日間で7ステージ、総距離900キロのステージ・レースです。わたしは今年のレースを、先頭集団のすぐ後ろに付くコム2というクルマに乗って、350キロメートル、ビデオを撮りながら走り、ロード・レースの迫力をたっぷり愉しみました。
トラック・レースには、ケイリンという、柔道と並び日本発祥のオリンピック種目があり、北京オリンピックで、初めてメダル(銅メダル)を獲得しました。
私は、UCIのトラック委員会の委員会の委員をつとめておりますので、トラック・レースの世界選手権、ワールド・カップなど、世界のトップがぶつかり合うレースを、これまで数多く見る機会にも恵まれ、いつもその迫力・魅力に圧倒されております。
欧州では、幼児の頃から、日本の草野球、草サッカーのようにサイクリングを愉しんでいますし、レジャーに旅行に観光に老若男女が活用しておりますし、ロード・レース、クリテリウム、トラック・レースが数多く開催され、六日間レースのように、六日間連続でのトラック・レースを社交の場として楽しむ興業が成り立つなど、サイクリングの人気が非常に高いので、なんとか、日本でも、もっとメジャーなスポーツにしたいものと思って努力しております。
アムステルダムで6日間レースを観戦しましたが、大変な人気でした。
実用面では、交通手段、運搬手段として、また、レジャー、スポーツ、観光、健康など、きわめて広範な分野で利用されております。
自転車は世界の共通語と言って、決して過言ではありません。
2.
日本の自転車の状況
8,600万台の保有(世界第3位、1位中国、2位アメリカ)
1,100万台の年間販売(軽快車50%、子供車30%→需要構造が、その国の自転車文化の質を表しております。)
平均単価22、195円。輸入品7,797円(900万近くを中国から輸入、国内生産は、113万(2007年)。最盛期は、941万台生産(昭和48年、1973年)平成2年797万台から減少に転じた)
(オランダ:2003年122万台の新車販売、そのうち500ユーロ以上の割合が48%、一日平均13キロ(全人口平均)と走行距離(トリップ量)が長い)。
自転車道路2660キロは道路全体(120万キロ)の0.2%(オランダ17%、ドイツ5%、イギリス4%)→自転車に絡む事故が多く、最近増加(2007年、交通事故に占める構成率。20%を超え、自転車乗用中の死者が745人も(全体5,744人、自動車乗用中死者数は10年間で5割以上減したにもかかわらず、自転車乗用中の死者数は3割減にとどまっております。)この10年で歩道上の自転車対歩行者の事故は7倍増加しております(参照:疋田智「自転車の安全鉄則」P.29)。
駐輪場が足りない(437.7万台の収容能力)→放置自転車問題あり(減ってきているが、33万台(2007年)
自転車の位置づけが曖昧
→道交法は対症療法的対応:昭和53年、自転車を歩道にあげ、平成20年道路に戻したが、自転車専用道路の整備はしないまま。
歩道にあげたことが、ママチャリを生んだ母胎(安かろう悪かろう自転車の原因でもある。1970年代前には、ママチャリ(歩道専用)はなかった。トリップ量(1日1台あたりどのくらいの距離を走るか)、は、オランダは日本の7倍にも達する。
自転車の高速性の評価がされていない
時速40キロも出る。ママチャリとは違う。
自転車に乗ったことがない人が道路を作り、ルール、マナーを作っている。(妹尾河童、劇場の形をした箱物を作るのと同じ弊害:出会い頭事故が多い。たとえば、左側通行の徹底だけで、死者数を半分に減らせるという疋田の主張あり「自転車の安全鉄則」朝日新書2008/11)
マナーが悪い
歩道では自転車が強者になる。耳元をかすめるごとく走り去る自転車が多い。
→こうしたことが、国民の自転車へのマイナス・イメージを助長している。
疋田智「自転車の安全鉄則」朝日新書2008/11 P.203には「現在、日本の自転車は、世界一事故が多く、世界一交通法規を守らず、世界一平均性能が低く、世界一保護されていなくて、世界一野放図で、世界一邪魔にされています」とある。
3.世界の自転車の状況
導入が進んでいるコミュニティ・サイクルシステムを中心に
ヨーロッパでは、もともと、環境に優しく、健康にもよいということから、自転車を活用してきたが、最近コミュニティ・サイクルシステムといわれる公共交通機関としての導入が進んでいる。79都市に及び、2007年、2008年急増しています。EST(Environmentally Sustainable Transport;環境的に持続可能な交通)OECDが提案する新しいビジョン。
パリ(人口217万人、面積105.40KM2)、花の都(市長:ベルトラン・ドラノエ「かつてないほど住民の生活の質はクリエイティブでダイナミックなものにあるでしょう」)
ベリブVELIB(VELO(フランス語の自転車)+LIBERTE(自由)という大規模レンタサイクルシステムが2007年7月導入された。
自転車20,600台、1,451ステーション(300mごとにあり、地下鉄駅のの4.4倍の密度
私は2007年10月パリ訪問し、VELIBを運営しているJCDecaux社の担当部長、パリ市の担当者と面談取材してきたので紹介します。
用意周到な準備があり、実によく考えられたシステムと実感しました。
自転車道路の整備:1995年8.2km、2007年末400キロ、2010年までに500キロ整備。
グリッド分析(パリ市庁が住民数、勤務者数、商店数など)→必要自転車数、駐輪場数の割出しし、入札を求めた。落札したのは、広告代理店のJCDecaux社(パリ市は、財政負担なしで導入。広告規制有り。1600の広告塔の設置許可でまかなう。)
JCDecaux社は2007年2月に落札し、7月には供用を開始している。
料金:一日券1ユーロ、1週間券5ユーロ。一年券29ユーロ。
クレジット・カードで管理しているので、取りはぐれがない。30分以内無料。次の30分1ユーロ、2ユーロ、4ユーロ。30分以内に戻しに来たが、駐輪場に空きスペースがなく、30分をオーバーする際、コントロールタワーにタッチすれば、近くの空きスペースを表示し、自動的に45分へ延長してくれる。日本語を含む八カ国語対応。
人工衛星で管理。故障車も直ちに認識可能で、供用を停止する。メンテ要員400人(8時間×3交代で24時間体制で対処。セーヌ川に専用の修理船。駐輪場の下にはマンホール、スペアパーツを保管。
ステーション間に自転車台数のアンバランスが生じるとクルマで自転車を運んで、台数調整を行い、足らなくならないように運営している。
24時間営業で、地下鉄の終電後にも利用されており、すっかり公共機関として定着した。
一年後:市内の総交通量の約3%が自転車に。市内の自転車利用は96%増加(01年比)自動車利用は20%減少(01年比)2KM
、18~22分が平均利用の形態。
一年定期の利用者が50%を上回ている。自転車によるフランス革命とも言われております。
パリ市は、このベリブや、LRT、自転車・バス専用レーン、パリ・プラージュ(交通規制)=ゾーン30が道路の10%)の利用で、自動車交通量を2020までに40%削減することを目指している。
リヨン市
実は、昨日、このJCDecaux社のシステムを最初に導入した(2005年)リヨン市の副市長が、私がベリブに熱心ということで、私のオフィスにお見えになった。
何よりも十分な準備が必要で、これが、成功の要因(99%)であると。また、○強い政治的意志を持つ
○社会的要請に、RIGHT TIMEに応える
○信頼に足りる技術、が不可欠
とのお話をいただいた。
このシステムは国際的に広がりを見せており、大手2社JCDecaux社CycloCity(20都市)ClearChannel社SmartBike(12都市)が、提供している。
導入国:フィンランド、ノルウェー、スエーデン、スペイン、オーストリア、ベルギー、オランダ、デンマーク
また、フランスには自転車宣言都市(1989年10都市で発足)、2007年950市町村地方自治体が参加しており、住民合計1600万人で、フランスの人口6400万人の4人に1人が、含まれる。
同様なシステムとして:
ドイツには
Call a Bike(6都市:ベルリンなど)→これは失敗とリヨン副市長のコメント。
Next Bike(6都市で競合)
イタリアには
Bicincitta(ビチンチッタ)ローマ、23都市。
ロンドンは、2008/7に2025までに1990年比CO2排出量を60%削減する計画を発表。(自転車の活用もその一環)環境より医療費の削減を目指すとも。ロードプライシング(クルマで市内に入るとお金(約1000円)かかる。
ロンドン市長(ボリス・ジョンソン(ぼさぼさの金髪で知られる44歳の若き市長)は「自転車都市こそ文明都市だ」と言明しています。
アメリカ・ワシントンDCにも、2008年8月にSmartBikeDCが導入された。
アメリカも、自転車利用を促進へ(サンフランシスコ、ゴールデンゲートブリッジ片側自転車道路へ、アーバニー市、車道を自転車道路へ切り替え。ポートランド市なども)
自転車都市化の例
ドイツ:ミュンヘン、ハノーバー、ハウテン、フライブルグ
デンマーク:コペンハーゲン
フィンランド:ヘルシンキ
オランダ:アムステルダム
以上お話したように、自転車が、都市の構造を変え、国民のライフスタイルを変えているといえます。
私どもの財団法人では、11月に、ベリブ研究会を立ち上げ、日本への導入促進を目指しております。
そのほかにも、自動車を規制する様々な方策があります。
都市中心部への自動車の乗り入れ規制。
ノーカーズデイ(フランスで初めて1998/9/22、ヨーロッパ56の国1600以上の都市)
ゾーン30(フランス・ナント市(人口27万)から始まった運動。テンポ30(ドイツ)
日本でも、盛岡市、名古屋市、奈良市、南さつま市はじめ、多くの都市が、自転車を活用してのの都市作りを進めている。
全交通に占める自転車の利用率ドイツ9%、オランダ27%(ともに2003年)
発展途上国でも、自転車は重要な役割を果たしている
再生自転車の供与事業を行っているが、時間距離は命の地域もあります。ザンビアでは、助産婦に自転車を貸与したところ、妊産婦の死亡率ゼロとなり、国連の表彰を受けた地域も出たと感謝されたことがあります。
4.意識改革・生活改革・構造改革のシンボルとしての自転車
今はまさしく時代の変革期、文明史的な転換点にあり、我が国も、意識改革の必要あり。一日も早く取り組む必要あり。放っておくと手遅れになりかねない。
構造改革・意識改革・生活改革の一つのシンボルとしての自転車の位置づけが可能であります。
ハード優先→ソフト優先(注:2009/11/05記す。まさしく「コンクリートから人へ」)
自動車優先→自転車との共生
社会的費用高いもの(道路整備、駐車場、事故対策、公害対策、健康対策)→社会的費用の安いものへ
自動化、機械力→人力、自然力の活用
高速→人間のコントロールできる速度
ハイスピード→スロー
環境負荷の高いもの→低いもの(自転車はいい環境を求める=環境に優しい自転車であるとともに、自転車にはいい環境でなければ乗れない。(注:2009/11/05記す。CO225%削減にもってこい。)
エネルギー多消費→省エネ、持続可能なもの
仕事優先→ワーク・ライフ・バランス
公的生活優先→私的生活も対等へ
仕事人間・会社人間→生活を真にエンジョイする人間。趣味人
低価格・バブル的な高価格→品質を評価して買う「少々高くてもいいものを」
量から→質の時代
長時間労働→適正な労働時間(時間的ゆとり、精神的ゆとりにつながるもの)
有給休暇も十分取れない→長期休暇がきちんととれる(日本の構造改革の欠点は、物を入れる空間(ハード)のみを考え、愉しむ時間を入れる時間的ゆとりを考えないところにある。)
低い労働生産性→高い労働生産性
効率一辺倒・機械重視→人間重視、ゆとり、人間らしい仕事の仕方、スローライフ(スロー。スモール、シンプル)、ロハス(Lifestyle Of Health And
Sustainability)
自動車道で分断された都市→スローシティ(ほどよい大きさの町:イタリア、10年前。コンパクトシティ。)
縦割りのばらばらで対症療法的政治・行政→国民の要請にタイムリーに総合的に応える政治・行政
こうした価値観の転換、意識改革、時空間の構造改革のどれにも、自転車はふさわしく、フィットする。
その意味で、時代のシンボルになりうる。
5.結びの言葉
自転車は世界を動かすというタイトルを見て、きっと大げさなタイトルと思われたことでしょうが、今、お話ししたような、世界の動向や、日本の構造改革・意識改革のシンボルになり、日本を覆う閉塞感の除去に寄与することを考えていただければ、それほど大げさではないと納得してしたただけたのではないかと思います。
まず、自ら自転車に乗っていただきたいものです。何よりも風を感じ、自然を感じ、自らが生き物であることを実感できます。メタボの克服、健康増進にもつながり、自動車に乗る回数が減れば、環境改善にも寄与できます。自転車に乗れば確実にあなたの人生が変わります。自転車に乗れない方がおられるようでしたら、ちゃんと乗れるようにしてくれるところを紹介します。
自転車の応援団を作ろうと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます
自転車:人類が発明したツールの中でベストなものの一つ
乗り手:人間:自然界が生み出したものの中でベストなものの一つ
その組み合わせは、間違いなくベストになります。
「自転車への愛が技術開発の根源にある」と、スギノ・テクノの幹部は語っています。
ルイゾン・ボベ(1953~55,ツール・ド・フランスに史上初めて3連勝した選手)「自転車選手、それは世界で一番すばらしい職業だ」
ランス・アームストロング(ツール・ド・フランスに7連覇した選手)の言葉
ランス・アームストロング「ただマイヨ・ジョーヌのためでなく」講談社 2000.8.25 から(p.93)
「僕はツール・ド・フランスに出場するとはどういうことなのかを学んだ。ツールは単なる自転車競技なのではない。それは人生を象徴するものなのだ。単に世界でもっとも長いレースであるだけではない。それはすばらしい心の高揚、極度の苦痛、また潜在的に悲劇を秘めている。選手が考えられる限りの、そしてそれ以上のさまざまな事を、選手に味わわせてくれる。寒さ、暑さ、山岳、轍の後、パンク、強風、クチにするのもいやなほどの不運、信じられないような美しさ、うんざりする無意味さ。そうしたことから本当の自分が見えてくる。人生の中でも、僕たちはいくつもの違った状況に直面する。時に後退を余儀なくされ、失敗と素手で格闘し、雨の中では頭を垂れる。それでも何とかして毅然と立ち、少しでも希望をもちたいと思っている。ツール・ド・フランスは単なる自転車レースではない。それは試練だ。ツールは僕の肉体を試し、精神を試し、そして道徳的にも僕という人間を試すのだ。
ようやくわかった。近道はないのだ。精神と肉体と品性を確立するには、何年にもわたって自転車に乗り続けなければならない。何百という試合に出場し、何万キロも走ることが必要だ。脚に、頭に、心に、鉄のような強さを持つまでは、僕はツール・ド・フランスでは勝てないだろう。一人前の男にならない限りは。ファビオは男だった。僕はまだその途上にあった。」
このように、自転車は、サイクリングは、人を夢中にさせる力を秘めております。私自身が、このように夢中になっておりますように。
自転車に乗ることを楽しめる社会かどうかは、その社会の成熟度を計るバロメーターであります。サイクリングを十分に愉しめる人間・時空間を作り出すことができれば、人類に未来があります。作り出すことは、十分にチャレンジし甲斐のある目標です。
1993年夏に、イギリスをドライブ旅行したとき、スコットランド・ハイランド地方のあの雄大な自然の中を、リカンベントに乗って、悠然と旅する人に何度も巡り会いました。そのときの印象が今でも目の底に焼き付いております。そこまで一挙に行くのは難しいでしょうが、自転車を楽しむライフスタイルを、今後積極的に提案して行きたいと思っております
実は私の家の近所の山手通り、これまで、地下に地下鉄や高速道路を建設すると言うことで、20年近くも堀り返されていたのですが、やっと最近工事が完了に近づき、自転車専用レーン9キロが次第に姿を現し始めました。こんな都心の幹線道路に、自転車専用レーンが敷設されるとは、まさに画期的なことで、新しい時代の幕開けを思わせるものがありますが、国も他の地方自治体も大いに見習っていただきたいと思っております。できあがったら、いい自転車を買って、そこを走ることを愉しみにしたい。またひとつ人生の愉しみを増やしたい、と思っております。そのときに備えて今は毎日エアロバイクを漕いでおります。
本日は、ご静聴ありがとうござした。